61 ティータイム



 とりあえずは自分の部屋に帰ることにする。これからやることは山程あるんだけど、どうにも頭の中の整理が追いつかない。国王陛下が何を考えているのかは分からないけど、今自分が出来ることを積み重ねていくしかないだろう。
 優先順位をつけるとするのなら、一番最初にすることは国王陛下のもとに人身売買の情報を提供した使用人を連れてくることかな。シルヴェストルのことは一先ずは置いておくことにして、他言しないようにだけ注意すればいいだろう。ベランジェさんに対しても不審なところを見られないように気をつけないといけないよね。うわあ、頭が痛くなってきた。でも今ここで私が頑張らないと、不幸になる人が増える一方なんだから。


「ただいま」
「お帰りなさいませ」


 部屋の前にジジさんとイネスさんが立っていた。いち早く私を視界に認めると恭しく頭を下げる。
 なんというか、こういう時に身分という現実を思い知るよね。別に私は偉くないのに、ただその家に生まれたからという理由だけでこうして頭を下げられるのは、どうにも落ち着かない。きっと、これは慣れてはいけないんだろうと思う。私は一生身分に慣れることはないんだろう。それでいいんだと思う。
 慣れてしまえば、ギュスターヴみたいな民のために何もせずふんぞり返っているだけのくだらない人間になってしまうだろうし。そんなのは絶対嫌だ。私は、『私』を強く持たないといけない。

prev next

 



top
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -