45 初心が行方不明
まあとりあえずは食物補給してもらうことにして。だって私の魔力は中の上なんです。中の上なんです。大事なことなので二回言いました。
「そくばくするつもりはないから、あとはじゆうにしてていいよ」
【分かりました】
シルヴェストルは私の頬を舐めて了承を示した。いくら契約をしたからといって束縛出来るとは考えていない。むしろ、力の差から言うと私の方が断然低いのだから、私が束縛される側だろう。それでもシルヴェストルが主だと認めてくれたのなら、その分に見合う努力をしなくちゃ。
簡単に言うと私も自由にさせてもらうからシルヴェストルも自由にして良いよ、ということだ。シルヴェストルにとって人間の営みに合わせることは窮屈だろう。実際、初めて会ったのも薔薇園でだし。きっと自然が好きなんだろうなあ。
私も自然は大好きだ。日本では濁っていた空気も、ここでは感じない。全身でマイナスイオンを受け止める爽快感を知ってしまった私は、その点ではもう日本に戻りたいとは思わない。今度、シルヴェストルにお願いして背中に乗せてもらおうかな。
「ジジ、イネス。シルはじぶんでできるみたいだからきにしなくていいよ。ごはんだけおねがいするね」
「畏まりました。しかしエミリエンヌ様、神獣様は一体何をお召し上がりになるのでしょうか」
そう言われてみればそうだね。一応形態は神獣といえども動物なんだから、私と同じ食事っていうのは駄目なんだろうか。ネギやタマネギが駄目とは聞いたことはあるけど詳しくは知らない。向こうでペットは飼っていたけどハムスターだったしなあ。
▼
top