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【これは念話です。この姿だと声を出しづらいので】
顔に疑問が浮かんでいたのを汲み取り、シルヴェストルはそう答えた。へえ、念話といえばつまりテレパシーみたいなものだよね。遠くにいても通じるのかな。私にも使えたら便利だろうに。
【マスターにも使えますよ】
「え、ほんと?」
【練習すれば可能です】
テンションが上がったと思えば、即行下がった。くう、上げて落とすという高度なテクニックを使うとは。やっぱり練習は必要なのか。私がチートなんかじゃないことを再確認。人間努力しなければ人間じゃないとかいう神様のお達しかな。やることがいっぱい増えて困る。魔法の練習の上に念話の練習か。これはまた確実に自由時間が減るよねぇ。でも自分にメリットがあるのは分かりきっているんだから、やめるという選択肢は存在しない。せめて街に下りることが出来るようになれば、色んなことをチャレンジする幅も広がることだし。うん、頑張ろう。
「へやにかえろっか」
シルヴェストルは尻尾をまた一振りして私の声に答えた。しっかりとシルヴェストルを抱え直して薔薇園を後にする。夜空に浮かぶ青い月はいつしか柔らかい色味に変わり、薔薇の白い花弁を染めていた。
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