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「シルヴェストルっていったいなにもの?ただのオオカミじゃないよね」
「人間には神獣と呼ばれています」
「けいやくってじたいとか」
「出来ませんよ」


 うわっほい。辞退出来ないとか本気ですか。これって私、どうしたらいいのかな。逃げる?いや、それで追いかけられて襲われたら怖いし。まあ契約っていうくらいだから私のことを傷つけることはないと思うけどね。それでも自分の身体の数倍も大きな体躯を持つオオカミに追いかけられるのは心臓に悪い。
 ここは平和的な解決で手を打とう。


「なかったことにできないんだったら、なかったふりをしてほしいの。わたしはこれいじょうめだちたくないから」


 オオカミ、シルヴェストルは何かを見定めるかのように私を見やった。暫しの沈黙の後、シルヴェストルの喉が震えた。


「…マスターがそう言うのなら従います」


 起伏の少ない声音の中に、僅かに躊躇いが見られた。申し訳ないことをしていると自覚はしているけど、これは譲れなかった。ただでさえ父親の件で王と関わりを持つことになったというのに、更にこの上に目立つ要素を増やしたくない。シルヴェストルの言う「神獣」とやらについてはよく知らないからなんとも言えないけど、よくない予感がする。うわあ、不可抗力だとしてもヤバいフラグ立てちゃったみたいだなあ。


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