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【シルヴェストル】


 唐突に頭に音が響いた。低いような高いような、人間のようでもあり無機質なただの機械音にも聞こえる不思議な音。私は目を見開いてオオカミを凝視した。この音の主がオオカミであることが直感的に分かったのだ。


「シル、ヴェストル?」


 恐る恐る音を口に乗せてみる。強い風が私の髪を煽った。それに呼応するかのように、オオカミの白い毛並みも波打つ。オオカミはただ目を眇めるだけだ。たぶん、いやどう考えてもシルヴェストルというのはこのオオカミの名前なんだろう。喋るだなんて、まさかそんなファンタジックな出来事が自分に降りかかるなんて思ってもみなかった。どうやら黒歴史にもう一つ追加されるようです。


「…あなた、はなせるの?」
「契約を終えましたので」


 聞こえたのは低いバリトンボイス。しっかりとオオカミの喉元が震えるのを私は見てしまった。声帯どうなってんだ。
 というか契約って何。まさか名前を交わすことだったりするの?普通のオオカミじゃなかったわけ?これはなんのフラグでしょうか。



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