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「ジジしゅきー」


 あ、噛んだ。と思ったらジジさんは身体を震わせて悶えだした。するとイネスさんが鬼気迫る勢いで「私はどうなんです?」と聞いてきた。私はイネスさんにぎゅっと抱きつく。


「イネスもすきだよ」
「………っ」


 ぎゅうううっと抱きしめ返されてちょっぴり苦しい。でもイネスさんにも好意を返してもらっているような気がして、私は甘んじて受けた。
 私の境遇は不幸だと言えるほど散々なものだけれど、私は幸せだと思う。親ではないが愛してくれる人がいる。この不可思議な容姿もすべて承知の上で受け入れてくれる人がいることに感謝する。腫れ物扱いする人たちが周りにいたとすれば、私は壊れていたかもしれない。
 前世の知識があるというのは、利用価値はあるものの逆に身を滅ぼす部分もあるもろ刃の剣だ。今となっては定着してしまっているから、前世の記憶などなければ良かっただなんて思わない。だけど、2、3歳頃までは膨大な知識のせいでよく熱を出していた。それくらい身体に負担があったのだ。そんな中で真摯に接してくれる人がいなかったら、多分私は狂っていたことだろう。
 心底心配そうに私を看病してくれたことが、私にとって生きる希望となった。親が見にくることもない日々の中で、それだけが確かな光だったんだ。愛されている実感がどれだけ私を救ったことか。いつか、感謝を伝えたい。恩返しをしたい。それがきっとフェリシテ家の建て直し計画に繋がったんだと今では思う。


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