「かえりたい」
地獄の晩餐会が終わり、部屋に着いて発した言葉がそれだった。留守番だったジジさんとイネスさんはキョトンと目を瞬く。
「エミリエンヌ様?」
「………」
何も言いたくない。もう思い起こしたくもない。無言でいる私に、ジジさんはふわりと抱きしめてくれた。めっちゃ良い匂いがする。あー癒やされるー。
荒んだ心が凪いでいく。ジジさんの肩にぐりぐりと頭をこすりつけたのは無意識だった。そんな私とジジさんをイネスさんが羨ましそうに見ていたことは気付かなかった。
「今日は甘えん坊でございますね」
こればっかりは子供で良かったと思う。遠慮無く甘えられるし。やろうとしていることは全然子供らしくないけど。
「エミリエンヌ様、この後どうなさいますか?」
「…もうちょっとこのまま」
クスクスと柔らかい笑い声が耳朶をくすぐる。
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