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「…おうひでんか」
「なあに?」
「おろしてほしいです」
「エミリエンヌちゃんは可愛いわねぇ」


 スルーした。スルーしたよ、この人。もう誰でも良いから助けてよ。晩餐会なのにご飯にまだありつけてないよ。美味しそうなご飯が冷めちゃうじゃん。


「おうひでんか、おなかがすきました」


 だから下ろしてください。とアピールしたのに、王妃殿下は予想の斜め上を行った。


「そうね。はいじゃあ、あーん」
「………………」


 目の前には差し出されたスプーン。私に一体どうしろと。いや、分かってるけど分かりたくない。


「狡いぞ!儂にもさせよ」
「エミリエンヌちゃん、あーんは?」


 王妃殿下のスルースキル半端ない。え、なに?結局この拷問に耐えなきゃいけないの?
 もう一度宰相の方を見る。ただ微笑ましげにこちらを見ているだけ。確かにおじいちゃんおばあちゃんに構われる5歳児というシチュエーションは微笑ましいに違いない。その5歳児が私でなかったらの話だけどね。給仕の人も微笑ましそうに見るだけで私の意図を汲んでくれない。諦めるしかないの?


「………あーん」


 私は泣く泣く口を開けるのだった。威厳はどこに行ったのやら。

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