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 そのためにはまず、民の生活を安定させるのが優先事項だ。フェリシテ侯爵家の領地では四季があり、雨にも恵まれていて土も良い。だから作物が育ちやすく、とても豊かだ。それ故に開拓は必要無い。その変わりに辺鄙な地域は半分閉鎖状態だから、せめて町と町とを繋ぐ道を作りたい。そうすれば情報も商人も行き来しやすくなるだろう。領を活気づかせた後に学校建設計画を実行しようと思っている。
 夢のまた夢にならないように、ジジさん達に見つからないように経営学も勉強中だ。日本にいた頃は勉強なんて好きじゃなかったけど、自分からやろうと思った勉強はとても面白い。小学生の時の「わかった!」喜びを久しく忘れていた気がする。この喜びを領民にも知ってほしいのだ。そのためにも今勉強を頑張って計画を実行する知識を養わなければ。


「成る程。そなたは聡く、そして優しい。爵位を剥奪しない代わりに、領をより良くして見せよ」
「はい!」


 言質は取った。これで心置きなく失脚させられるね。腹黒だなんて失敬な。利用出来るものは利用しないと世の中上手く生きれないんだよ。


「今日は泊まってゆくがいい。客人として扱おう」
「ありがとうございます」
「晩餐までゆっくり休みなさい」


 そう言った国王陛下は、私のおじいちゃんだったら良いのになあと思ってしまうくらいに優しい微笑を浮かべていた。

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