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 ちょっとしたハプニングはあったけど、無事城に辿り着いた。城はモンサンミッシェルみたいだったよ。海外旅行に来た気分。おのぼりさん状態なのは仕方が無い。だってこの髪と目のせいであまり外出は出来なかったから、屋敷の外に出たのはほとんど初めてなのだ。まさに箱入り娘(自分のことだけど)。


「エミリエンヌ=M=フェリシテ様ですね。話は伺っております。こちらへ」


 門も問題なく通してもらって案内役らしい男性を先頭に私、ジジさん、イネスさんの順にぞろぞろと付いていく。教会などとはまた別物の厳かな雰囲気に呑み込まれそうになる。こんなので本当に謁見なんて大丈夫だろうか。手は震え、足はガクガクする。身分制度だとか国王だとかあまり実感したことはなかったけど、今から会う人は総理大臣や大統領とは違って生まれながらにして国の一番になるべく育ってきた人だ。まさに生来の王。そんな人に私は立ち向かわなければならない。なんて重大な役目なんだろう。
 でも、とも思う。この世界に生まれ落ちたのはフェリシテ家を変えるためだ。父親を失脚させることでフェリシテ家が落ちぶれ、私が路頭に迷うことになったとしても。それでも許せないことは許せない。私は別に正義を振りかざしたいわけではない。これはただの自己満足だ。自分が、許せないだけ。でも、そうすることで救われる人が必ずいるのなら躊躇う必要など無い。


「こちらが王の間です」
「ありがとうございます」


 美しい所作で礼をした男性は、重厚な扉を押し開けた。もう身体の震えは止まっていた。真っ直ぐ顔を上げて前を見据える。さあ、行こう。



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