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 まず敵と見なすのは父親だ。父の名前はギュスターヴ=M=フェリシテ。フェリシテ家の現当主だけど、その容貌は見苦しい。人相と内面は比例すると言うがまったくその通りだと思うよ、ほんとに。領内の税金を吊り上げて搾取するわ、他の爵家に賄賂を送るわ、なんていうのはまだ可愛い方で、批判した者を即打ち首にするわ牢屋に入れるわでもう汚職どころの話じゃない。その上最近人身売買にも手を出しているという情報が耳に入ってきた。胸糞が悪い話だ。それも、他の爵家も手を組んでいるというのだから、最早言葉もない。もう野放しにすることなんて、到底私には出来なかった。
 というわけで、現在ジジさんに調査を依頼している。糞男の決定的証拠を得れば裁けるからね。齢5歳の幼子の言うことをまともに聞いてくれるかどうか、最初は懸念していたのだけれどそれは杞憂に終わった。私の話を聞いたジジさんは力強く頷くと、屋敷で働く非当主派の人々に呼びかけてくれた。どうしてすんなり私の言うことを聞き入れてくれたのか尋ねてみたところ、「エミリエンヌ様が普通ではないことは前々から承知していましたので」バイ、ジジさん。まあ私とて前世の知識を無意識に口に出している自覚はあったから驚かなかったけど。イネスさんやアナベラさんもどうやら感づいているようだ。流石に他の働く人々すべてが私が異常だと気付いているわけではないみたいだけど、半数くらいは知っているとのこと。それを聞いてもういっそのこと開き直ってしまえ。となった私は変に隠すこともなく自分のまま貫くことにした。そんなわけで、私は今父親の失脚を狙いつつ勉強に勤しんで毎日てんやわんやなのだ。


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