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 そろりとヴァンを見上げる。ただそれが幼子に対しての言葉なら、海だって即座に首を振っただろう。それが出来ないのは、どうしてか彼の瞳にそれ以外の感情が見え隠れしているのがわかったから。海は返答に窮して視線をさまよわせる。
 ここで笑い飛ばしてしまうのも、得策ではないような気がした。揺れる目を見ればそんなこと出来なかった。でも、とも思う。中身はともかくとして、外見は「少年」だ。受け取るのはヴァンの体裁に関わる。
 もう一度、海はヴァンを見上げた。彼のことは好きだと思うが、その感情がヴァンと同じであるのかはまだ分からない。是非を出すのには時間が、足りない。


「…あの、それは…」


 一応確認しておこうと口を開いたが、もごもごと口ごもってしまう。目を合わせないようにうつむき、小さな声で「親愛として、ですか」と問うた。


「そうだったら、良かったんだがな」


 ヴァンは困ったような微苦笑を浮かべた。「ああ、やっぱり」と思わずにはいられない。


「気持ち悪いと思うか」
「…いいえ、」


 ヴァンの言うように気持ち悪いとは思わなかった。というより言われるまで男同士という概念を忘れていた。そこでようやく、問題は幼子というだけではないことに気付いた。

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