知らない土地に来た当時は、すぐにヴァンという保護者が得られた。乱暴で、強引で、薬に関してはイキイキする変な人物だが、海には優しい。
毎日のように精霊や聖獣たちに囲まれて、寄り添ってくる彼らが愛おしくて、寂しさなど考える暇など無かった。自分を害するものがなかったから、甘えてしまっていたのだ。いわば依存に近い。そんな海にとって精神安定剤とも言える彼がいなくなってしまったら、きっと海は壊れてしまうだろう。
「生きていることが、間違いなのかも」
元々、一度は死んだ命なのだ。ここに存在すること自体がおかしい。強い風が吹いて、髪を揺らした。
【本気で言っているというなら、怒るぞ】
冷たい声が響き、バッと隣を向く。
「あ…」
【死にたいと願うのは、我や他の精霊、聖獣に失礼だ。お前の存在を喜んでいる者がどれだけいると思っている】
「ごめ、」
呆然とサラマンダーを見上げた。赤い瞳から温度は一切感じられない。急に、怖くなった。
彼に、彼らに嫌われてしまえば、もう自分の居場所はどこにもない。そしてそう考える自分さえ憎くなった。自分本位でしか考えられない、傲慢な自分。
繋いでいる手が震えた。咄嗟に離そうとしたが、サラマンダーが力を入れることで不可能となる。
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