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「分かっていたことなんだ」


 ポツリ、そう呟いた。と同時に握る手に力を込める。本人は無意識なのだろう。心中での葛藤を察してサラマンダーは眉を潜めた。


(ここに来た時から分かってた)


 滅多にいないという光属性であり、その上異世界からやって来たという稀有な存在であると自覚した時に、自身について詮索される覚悟は出来ていた。出来ていた、はずだった。しかし預かり知らぬところでヴァンが文書交換をしていたことや、エティンセルに試されるような真似をされるなど、気分の良いものではない。
 まだ、エティンセルは良かった。異分子である海を判断する必要はあるだろうから。だが、一番心に痛かったのは、ヴァンに裏切られたことだった。


(いや、違う。裏切られたと思ってる自分が、一番愚か)


 海は自嘲した。右も左も分からない世界に来て、最初に会った人物なのだ。信頼しないわけがない。良くも悪くも、ヴァンに監視されていたのだろう。予想していなかったわけではない。可能性は十二分にあったが信じてみたかったのだ。

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