慣れた様子で獣道すら無い道無き道を歩む。家を飛び出してきた時に纏っていた光も、今は随分と落ち着いていた。それでも完全に怒りが収まっているわけではない。先程のように激情に流されるままとまではいかないが、沸々と沸き上がるものは抑えようがなかった。
【海】
「…サラマンダーさん」
赤髪赤目のワイルド系の美男子が、俯く海の名前を呼んだ。前を向いて火の四精霊である彼を視界に入れる。
サラマンダーは困った顔で笑んで海の隣に並んで共に歩き出した。二人の周りには既に多くの精霊や精獣達が集まっている。心配してくれていることにはとうの昔に気付いていたが、まだ怒気を持て余しているので苦笑いすることしか出来ない。
【海】
再度呼ばれて高い位置にあるサラマンダーの顔を見上げると、目の前に手が差し出された。意図を正確に理解した海はその大きな手に子供特有の柔らかい手を重ねた。
子供扱いにももう慣れたというか、半ば諦めたというか。あまり抵抗のなくなってしまった自分に複雑な気持ちになったが、気にしていても意味の無いことなので無理やりスルーする。
▼