―――ドスッ
「ぐえっ」
「くだらないこと話してんじゃねぇよ」
エティンセルの背中に無遠慮にのしかかったのは、話の当事者であるヴァン。気配を隠してはいなかったが考え事をしていたために避けられなかったようだ。
「ヴァンさん」
「あ?」
「僕に対して甘いって、本当ですか?」
ゆらりと揺れる深緑の瞳にヴァンの姿が映る。見るからに不安そうな海の髪を、テーブル越しにわしゃわしゃと掻き混ぜる。グラグラするがされるがままになっていると、ポツリと小さな声が耳に届いた。
「…さあな」
いつも断言するヴァンが歯切れの悪い返答をする。ふい、と顔を背けた彼にエティンセルは突然噴き出した。
「海ちゃん海ちゃん、ヴァンの耳見てみなよ」
「耳?」
落ち込む海に声をかけた。海が首をかしげながら言う通りにヴァンの耳を見やると。
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