「ヴァンの一族は、大貴族の中でも珍しく地位に固執しない変わり者ばかりだ。だけどそれを許すほど周囲は甘くないんだよ」
「敵が多いってことですか?」
「そう」
高すぎる地位はやっかみや妬みを買う。それを指摘しているのだろうと海は解釈した。下位の者からすれば家柄が良いだけの癖にと憎み、同等貴族からしてみれば生意気だと言われるのだろう。
「だからこそヴァンは努力し、最上使いにまで登りつめた」
凄い奴だよ、と穏やかに笑ったエティンセル。その顔は尊敬と誇りに満ちていた。
(良いなぁ)
ヴァンのことをよく知っているエティンセルが羨ましい。自分だってもっと彼のことを知りたいのに。
そこまで考えて海はハッとする。何を考えているのだろう。これではただの嫉妬ではないか。海は思考を振り払おうとふるふると頭を振る。
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