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「海ちゃんは異世界からリュミエール王国に来たんだっけ」
「え」
「事前にヴァンから聞いてたんだよ」


 ああ、なるほど。と海は相槌を打つ。もしかして文献などで、光属性、精霊に愛されし者は異世界から来ると残っているのか、と一瞬期待したがすぐに散ってしまった。少し残念ではあるものの、気を取り直してエティンセルの話に耳を傾ける。


「君の世界では違うのかもしないけど、ここの身分社会は複雑なんだ」


 口を挟まずに、海はエティンセルの横顔を注視した。
 日本では身分差別が法的に禁止され平和な国であるために、海は身分というものに縛られない自由が当たり前だと思っていた。もちろん地球に生を受けていた頃、他国で差別なるものがあるのを知っていたし、大学生の時地理専攻だった海はそういった類も研究していた。
 例えば子供を殺したとしても、その子供が最下位の身分、むしろ人間と見做されていない身分であったなら罪に問われない。そんな国もあった。
 だけど自分の身に降りかかる事が無いから、どこかで客観視している自分がいた。しかし今は状況が違う。この世界で生きる限り身分という言葉は付いてまわるのだ。使い制度が実力主義であることが、まだ救いだろうか。

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テーマ「人外ファンタジー」
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