「挨拶はいいから大人しく座っときなって」
「すみません」
しゅんとうなだれて海は椅子に座り直す。その様子を苦笑して見やり、エティンセルは口を開いた。
「聞きたい事があるんだろー?」
「!」
「なら体力温存しときな」
コクコクと勢いよく頷く海にエティンセルは表情はにっこりと笑んだまま心中で納得する。
(こりゃあヴァンが目を離せない訳だ)
一言で表せば危なっかしいに限る。その同じ人間とは思えない特上の美貌もそうだが、変に謙虚な性格や突飛な行動には苦労しているのだろうとエティンセルはヴァンに同情した。
何にせよ、容姿といい魔力といい存在価値といい、自覚というものが足りないというのが今の印象である。
「質問、しても良いでしょうか?」
幼い美声に目を瞬く。てっきりヴァンが調合から戻ってきてから話をすると思っていたのだ。
一方、海自身は逆にヴァンが戻る前にどうしても聞いておきたいことがあった。直接聞いたとしても、恐らくヴァンは欲しい言葉をくれないだろうと確信していたからだ。
海の心の内を知らないエティンセルだが、なんとなくヴァンに聞かれたくないことなのだろうと検討をつけて続きを促した。
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