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海は椅子から立ち上がり頭を下げた。たとえ無礼な事をされたとしても、礼儀を忘れない。その姿勢にエティンセルは好感を持った。


「僕は七色海です。海と呼んで下さい」
「海ちゃんな。俺はユン=エティンセル=マークィスだ。エティで良いぞー」
「はい、エティさん」


 にっこりと微笑んだ海だが、その華奢な体が傾いた。それはそうだろう。まだ魔力や体力が回復していないのだ。
 エティンセルはヴァンのように風を起こし減速させることなど出来ない。傾く体を反射神経だけで腕を伸ばし抱き寄せる。
 それでもやはり間に合わずに二人揃って床に倒れ込んだ。エティンセルは海の頭を守る為に咄嗟に左手で後頭部を守り、右腕は衝撃を吸収する為に床に付け体を支えている。


「平気か!?」
「…は、い」


 海は顔の近さに驚きながらもなんとか頷いて見せた。エティンセルは詰めていた息を吐き出し頬を緩ませて起きあがらせる。

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