「これだけの広範囲に高度な結界を張ったんだ。普通なら気絶する」
下手すりゃ死ぬ。ヴァンの言葉に顔を青ざめた。初めて使ったのだから加減なんて出来るはずもない。ましてや自分の魔力がどれだけあるかなど知らない為、海は痛む頭を押さえた。
「光属性だから出来るんだろうけど、流石に魔力が莫大じゃないと100%死んでるよなー」
そう呟いたエティンセルに振り返ったヴァンは「そういや居たな」と顔に書いてあった。明白な表情にエティンセルは溜息を吐く。
「エティ、お前何しに来た」
「相変わらずだなぁ」
偉そうな物言いは昔から変わらない。エティンセルはゆるゆると笑った。そして地面に膝を着き敬意を示す体勢をとる。
「エンペラーからのお達しでございます。ヴァン=ラ・シエル=グランドデューク様」
エティンセルが言った内容にヴァンは苦々しげに眉を寄せて舌打ちをする。未だヴァンの腕の中で意識を保つ海がピクリと反応した。
(さっきも言ってたけど、グランドデュークって)
最初にエティンセルがヴァンの名前を言い返した時から、海は引っかかっていた。此処に来てから三年間、膨大な書物を読んできた中で貴族の位は嫌という程に出てきた。
当初は覚えられなかった海だったが今ではすっかり理解している。「グランドデューク」。それは貴族の中でも皇帝、国王に次ぐ確固たる地位。
▼