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「あれ?」


 いつの間にか、森中の精霊を初め、妖精や神獣、動物までもが海を取り囲んでいた。
 しかしその全員が全員、普段は見せることのない獰猛に光る瞳で狼王と同じ一点を睨みつけている。今から何が起こるのか。分からないが決して良い事ではないだろう。
 初めて見る本能を剥き出しにした彼らを見ても、恐怖が湧く事は無かった。彼らが自分を守ろうとしてくれているのが分かったからだ。海も彼らにならって前方を見据える。


「まさか生きている内で精霊に愛されし者が見れるとはなぁ。眼福眼福」


 いつ現れたのか全く分からなかった。その方向をずっと目を離さず見ていたはずなのに。真紅の髪と瞳の男がそこにいた。
 海は驚きに目を瞠るが、精霊達はひたすらに男を威嚇している。笑みを浮かべてさえいるものの、男の目は笑っていない。男がこちらに近付いてくるのをじっと見つめた。


「へぇ、上玉じゃん」


 精霊達が怯えているのか後退る。しかし海は目を逸らすこともなく微動だにしない。


「度胸もある。上等」

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