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【海様、海様。精霊に愛されし者】
「どうしたの?」


 小さな小さな声を聞き逃すまいと耳を寄せた。その気遣いが嬉しかったのか、風の妖精は声を弾ませる。可愛らしい音色に無意識の内に甘い笑みが浮かんでいた。
 ただでさえ人形の如く整った顔立ちが甘く崩れた微笑みに、風の妖精たちと狼王は感嘆の息を漏らす。


【伝言があります。シルフ様からことづかっているのです】
「シルフさんから?」


 風属性の頂点に立つ彼女は、時々こうして伝言を海に残す。「風の噂」といった言葉があるように、彼女は情報には鋭い。しかもその情報が外れたことは無いのだから、海は尊敬していた。


【はい。人間に気をつけてとおっしゃっていました】
「人間?」


 はて、それはどういうことだろうか。
人間といえば、海は自分自身とヴァンしか見た事がない。その言葉に意図を解そうと必死に思考を巡らせる。それを遮ったのは狼王だった。

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