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◇◇◇


「ついたぞ」
「ありがとう」


 数分間かなりのスピードで走り続ける狼王の背中に必死にしがみついていた。今はもう慣れたものだけど、最初の頃はそれこそもう半泣き状態だった。恐怖でしかなかったのだが次第になんとも思わなくなった。
 海は美しい銀色の毛並みを一撫でして降りる。狼王は青の瞳を細めた。薬草を採取する際にいつも手助けしてくれているが、海には何故狼王が毎回手伝ってくれているのかいまいち分からない。尋ねても結局答えてくれないので半ば諦めているが。誰も彼も秘密が好きだなぁと、海は心中で呟いた。


「どれくらい要る?」


 いつの間にか隣にいた長身の美青年が声を発した。流れるような銀髪は絹糸のようで、切れ長の瞳は宝石のように青い。しかし発されたその声は先程まで鼓膜を震わせていたものと同じだ。
 海はつい今し方まで自身を背に乗せてくれていた彼を見上げた。今、海の容姿は10歳程度のもので、しかも一般よりも身長が低い。平均は大体140くらいであるのに対して海は130にも満たない。その上この世界では日本よりも平均が高く、成人男性の平均は180である。
 つまり、海はかなり小さい。といっても海自身この世界ではヴァンしか会っていないものだから気付いてはいないが(ちなみにヴァンは185程である)。それに比べ狼王はおよそ190近くある。この身長差はどうしようとも埋められない。
 故に必然的に海が見上げる形となるのだが、流石にこれだけの差があるのだから首が痛い。というよりも見上げても狼王の顔が見れない。
 一度離れるべきかと考えた海だったが、行動に移す前にそれに気付いた狼王がしゃがみこんだ。漸く合わさった目線に安堵した海は形の良い唇を動かして音を発した。

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