12
「まず世界について教える」
「あ、はい」
現実世界へと戻ってきた海はコクリと頷いた。ヴァンはどこから話すべきか悩んでいるようだ。
「まあ知っての通り、この世界には精霊と魔法が混在する」
「その二つとも僕の世界にはありませんでした」
ヴァンの目だけで問われた質問に答えれば、ヴァンは僅かに眉を顰める。この短時間で分かってきたことだが、不機嫌そうに眉を寄せるその表情はどうやら考え事をしている時の癖のようだ。海はそのことを理解して根気強く待った。
「そうだな。精霊と魔法によってこの世界は秩序が保たれている。その秩序を保つために中心となるのがこの国、リュミエール王国だ」
ヴァンは海に「ちょっと待ってろ」と一言残し隣の部屋へと向かった。数分後出てきたヴァンは手に持っていた丸まった紙をテーブルの上で広げてみせる。
「これがこの世界の地図だ」
「へぇ」
地歴を元々専門としていた海は興味津々とした様子で地図を覗き込む。やはり地球とは全然違うようで、見たこともない形に「やっぱりここは異世界なんだなぁ」と心の中で呟いた。
よくよく見ていると、国の数はかなり少ない。十数個ほどしかないようだが、どうやらその国の中で分離しているようだ。
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