「名前は」
「あ、七色海です」
「ナナイロカイ?」
「海が名前です」
少年、海がそう訂正を入れると男は不思議そうな表情になった。
「お前、貴族じゃないのか」
男は聞いたことのない姓に呟いた。海が「貴族?」と再び首を傾げるのを見て、男は僅かに表情を和らげた。
「俺はヴァンだ」
「ヴァン、さん?」
「ああ。ところでお前迷子だろう、送ってやるよ。どこだ?」
「えっと…」
男、ヴァンの親切な言葉に海は困惑した顔になる。その様子にヴァンは首を捻る。
「あの、ここは日本でしょうか」
海は恐る恐る尋ねるが、答えはとうの昔に知っていた。冷静に考えれば考えるほどすべてが可笑しいことに海は気づいていた。
「ニホン?ここはリュミエール王国だ」
「そう、ですか」
聞いたことのない国名に海は肩を落とした。海は今までの記憶を手繰り寄せようと思考を巡らせる。
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