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ミセバヤというのは花の名前で、花屋になる際に前花屋から名をもらう。木葉が前花屋に頂いたミセバヤの名は”静寂を愛する”という花言葉を持っている。
木葉はその花言葉がよく似合う青年だ、否、寧ろ花言葉自体が木葉に合うようになっているのかもしれない。そう思うほどに、派手な物事を好む学園の中では珍しく、彼はひっそりとした空気を好み、自身もひっそりとした儚げな雰囲気を纏っている青年である。
だが彼は地味などでは決してなく、絶大な人気を誇る生徒会や風紀と負けずとも劣らない、いやもしかしたらそれ以上かもしれない、そんな容姿をしていた。肩に掛かるか掛からないかの瀬戸際である、男にしては長めの黒髪は艶やかで、漆黒の濡れた瞳は見る者を魅了し惹きつける。
そんな彼がひっそりと学園で暮らせているのには訳がある。ひとつは非公式親衛隊、別名、篠原木葉様の願う静寂を守り隊の存在(もちろん木葉自身は親衛隊があることを知らない)。
もうひとつは彼が花屋であるがゆえ。花屋になるには情報に強くなければならない。その点、彼は元々情報収集が趣味であったり、前花屋に更に広い情報網を教えてもらったので、木葉は自ら情報操作を行い、平穏な生活を送っていた。
これは、そんな彼、篠原木葉の物語である。
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