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「悪い。木葉に言っても仕方が無ぇな」
「…いいえ、大丈夫です」
苦笑する裕貴に、木葉は目を細める。
「授業頑張れよ」
「はい」
ひらひらと手を振って忙しそうに早足で立ち去る裕貴に呟く。
「願い、承りました」
木葉は放課後早速パソコンへと向かう。画面上にこの学園の敷地内の地図を広げ、隅々まで見る。
木葉がよく強姦に出くわすポイントに色をつけてゆく。危険度が高い方から順に赤、黄、緑に分ける。更にその場に行くまでの木葉が知っている限りの抜け道と近道を掲載し、その場にいると仮定した場合に、その加害者が逃げる方向もまとめ、逃がさないように最低限の人数を予測し書き込んでいく。
その他細かいところまで書き記し、全てが終えた頃には朝日が昇っていた。木葉はカーテンから差し込む光の眩しさに目を瞑った。
「…出来た、かな」
プリントアウトした地図を二、三度確かめて頷く。茶色の封筒に地図を入れ、打っておいたカードも入れておく。
「筆跡でバレたら困るしね」
鼻歌を歌いながら狐の仮面と紅を塗り、ちゃっかりと手袋をつけて封筒を持って立ち上がる。
「(電気ついてる)」
木葉は風紀委員室の扉の前で目を瞠った。まさかこれほど朝早くに人がいるとは思っていなかった。
というより、もしかして徹夜なのだろうか、と考え込む。少々考えていたが、とりあえず仕事を終わらせようと、扉をノックした。
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