06



ふたりめ


「花屋ってどうやって探すの…」


 小柄な可愛らしい男の子が困った顔で校内を彷徨っていた。彼、小林真人は花屋を探していた。
 しかし探すといっても、知っているのは噂だけで本当にいるのかどうかも分からない。人に聞いても同じように噂しか知らないのだから、真人は途方に暮れていた。


「お客様、私をお呼びでしょうか」


 唐突に目の前に現れた、狐の仮面に紅を引いた唇が印象的な人。


「38代目花屋ミセバヤ。どうぞよろしく願います」
「本物…!?」
「本物ですよ」


 木葉は内心苦笑する。どうしてこうも本物なのかと疑うのか。いや、けれども存在すら不確かな者だから、仕方が無いのかもしれないと自分で納得した。


「あの、頼みがあるんですけど」
「はい、何でしょう」
「彼氏がその…来週誕生日なんだけど」


 少し頬を染めて言う真人はとても可愛らしい。男ではあるが、恋する乙女ってこんな感じなのだろうか、と木葉は思う。

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