「!?」
壱は目を白黒させて、辺りを見回す。しかしそこに人影があるはずもなく。
どうすることも出来ず、小さく息を吐き出した壱はその場に座り込んだ。きっと見つけてくれると、心底で否定しながらも期待していた。その数分後。
「お待たせしました」
「!」
またもや唐突に現れた木葉に目を剥くが、木葉が腕に抱く猫を見て驚く。
「みぃ…!」
「にゃー」
木葉の腕の中に収まっていたみぃがするりと抜け出して壱の肩に乗る。みぃは反省しているかのようにスリスリと壱の頬に顔をすり寄せた。
その微笑ましい様子に木葉は赤い唇を僅かに上げた。しかしすぐにもう用は無いと、颯爽とその場を去った。
壱はハっとして彼を探すが、姿はどこにもなく。
「…ミセ、バヤ…」
みぃが頬を舐めてくるのを感じながら、その場で佇んでいた。
御仕事完了
「…あ、木の上に本忘れちゃった」
▼