05



「…かいちょお、」


 ようやく臣のもとへと辿り着いた唯は少し不機嫌そうな声音で臣を呼んだ。


「もしかしなくとも、寝てないでしょー?」
「………」


 もともと群を抜いて恐ろしく美形な臣であるが、今は…今も確かに美形ではあるが、彩が欠けている。原因は彼自体に覇気が弱く感じられることと、それから切れ長の鋭い目の下にくっきりと隈が出来ていることが挙げられる。
 問いに無言で返事を返す臣に、唯は溜息を吐くのを寸前で堪える。


「かいちょお、無言は肯定と見做しますよぉ?」
「………」


 無言で眉を寄せる臣に、唯は堪えきれなかった溜息を吐き出すと生徒会室の奥にある扉を指差した。そこは簡易仮眠室である。


「…寝てきてくださぁい」
「駄目だ、仕事はまだ終わっていない」
「かいちょお?」


 首を振る臣に、唯はにっこりと笑ってみせる。それを見た臣は渋々重い腰を上げて、フラフラと扉に向かう。


「…一時間後に起こせ」
「分かりましたからーさっさと寝てくださいねぇ?」
「…頼んだ」
「頼まれましたぁ」


 扉の前で立ち止まり振り返る臣に、ヒラヒラと手を振る。臣は諦めたように仮眠室へと入っていった。それを見届けた唯はふぅ、と息を吐いて腕まくりする。


「あの人はもう。無理をし過ぎでしょう」


 誰もいないことをいいことに、唯はヘラリと浮かべた仮面を外し敬語に戻る。


「さて、やりますか」


 唯は臣の机の上に置かれた書類の山の一つを手に取り、自分の机へと向かった。

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