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「餌付けって言うんだよ狛くん!騙されてるって!!」
「餌付けじゃないもん」


 唯の言葉にプクリと頬を膨らませて怒った表情をしてみせる狛は可愛いのだが、唯は頭を抱えた。完全に心を許してしまっている様子の狛。
 あの鬼畜眼鏡は策略家だ。それはもうお腹は真っ黒黒である。恐らく狛が絆されているのも計算の内だろう。つまりは、完璧に狙われているということだ。


「狼に食べられる狛くんを黙って見てるわけにもいかないんだけど折角恋した狛くんの応援もしたいよどうしよう狛くん」
「応援してよぅ」
「うぅ…じゃあ食べられないように見張りながら応援する…」


 項垂れる唯。本音がだだ漏れどころか語尾を伸ばすのを忘れてしまっている。違和感の全く無い口調に狛が疑問を感じることもなくにっこりと笑っている。


「ありがとう、唯くん」
「…どういたしましてぇ」
「あのね、相談したいんだけど良い?」
「勿論」


 話の流れからして坂巻についてだろうと検討をつけた唯はピンと背を伸ばして聞く体勢に入る。一言一句漏らすまいといった気迫を感じる。

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