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「何それ聞いてない!」
「だって誰にも言ってないもん」
「あ、相手は!?」
「えっとね、坂巻先生なんだぁ」


 まさしく恋する乙女の表情で言い放った人物に、唯は気を失いそうになった。狛の言う坂巻先生、坂巻尚次(さかまきなおつぐ)はこの学園一ドS、そして(痴情の縺れ的な)噂の絶えない数学教師である。
 萌えよりも前に可愛い娘の父親状態の唯は叫んだ。


「お父さんは許しません!!あんなっあんな鬼畜眼鏡に狛くんのハートが奪われるなんてぇぇええ!!!」
「きちくめがね?眼鏡は確かにしてるけど」
「俺は狛くんをわざわざ狼に差し出したりなんてっ…絶対邪魔してやるからねぇ!」
「お父さん戻ってきてくださーい」


 久々に暴走する唯だが、実は中等部からの付き合いである狛は慣れたものである。ついでにノリに付き合うところも当時から変わっていない。


「先生って、凄い良い人なんだよ」
「騙されてるっ騙されてるよ狛くん!!」
「いつも放課後に数学準備室でお茶してるの」


 お菓子もくれるんだよ、とほにゃりと笑う狛は愛らしい。そりゃあもう悶えるほどに愛らしい、が。

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