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「(狛くん、こっち)」
「(え)」
「(早くっ)」


 戸惑う狛の背中を押して慎重に外へと向かう。ほとんどの生徒が未来と臣と朱鷺のやり取りを見ているようで、まだ見つかっていないようだ。


「(氷室様、こちらです)」
「(ありがとぉ)」


 どういたしまして、と柔らかく笑む美少女、もとい美少年は唯の親衛隊隊長である。彼、日下部祐一は親衛隊員を使って道を作ってくれていた。一人一人に礼を述べる余裕が無いのでせめてもと祐一に微笑んだ。
 パタン、と裏扉が閉まったところで漸く息を吐き出した。じっと見てくる狛に気付いた唯は小さく笑んで手を引いた。


「少し、話そっかぁ」
「…うん。唯くん」


 花が開くような笑顔というのはこういうものか、と唯は思う。狛は可愛らしくはにかんで唯を見上げた。


「ありがとう」
「どういたしまして」


 二人して微笑み合って、「(可愛いなぁ/可愛いですねぇ)」なんて思うことまで同じであったのは、誰も知るよしもなかった。

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