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「氷室、悪かったからそんな目で見るな」


 困ったように岸辺は顔を歪める。唯はその表情を見て、八つ当たりだったと反省した。岸辺に当たっても意味がないのだ。目の前のもじゃもじゃモンスターを倒さなければ。


「無視すんなよ!俺がいるのに他の奴と話すなんてサイテーだぞっ!!」
「ごめんねぇ」
「おう!俺は優しいからなっ許してやるよ!」


(どれだけ上から目線なんですかね)


 それにしたってこの四方八方から睨まれているこの状況がどうしたものかと考える。副会長を始めとする唯と臣以外の生徒会役員達、更に学園で人気がある一匹狼と爽やかくん。
 はてさて、と思いながらも唯の目線の先は一つだった。未来が強く掴んでいる、その生徒。顔は青ざめて今にでも倒れそうな彼。平凡な顔立ちながら、目は大きくクルクルと変わるその表情が愛らしい彼は、紛れもなく唯の友人であった。


「ありがとぉねー」
「おう!早く飯食べようぜっ!!」


 未来に視線を戻してニコリと作った笑みを顔に貼り付ける。チラリと友人である立沢狛(たちざわこま)を見やれば、目線が合わさった。
 顔色は相変わらず悪いが、その瞳は真っ直ぐに唯へと向いている。強く純粋なその目に唯は満足げに微笑んだ。

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