「よりにもよって風紀とかお前馬鹿だろ」
「言われなくとも分かってますよ」
あまりにもストレートに言われて唯も思わず落ち込んだ。というよりは自己嫌悪に陥った、というほうが正しいのかは定かではないが。臣に指摘されるまでもなく、自分でもそう思ってはいるのである。
「あの」
とりあえずこの状況を打破しようと声をかける。
「何だ?」
「離して貰えませんか?」
「無理だな」
即答されて唯は内心「やっぱり」と呟いた。
「お前、この状況分かってるのか?」
「えーっと」
ジリジリと壁に追い詰められる。唯にしては、分かりたくないというのが本音である。
「危機感なさすぎるだろう」
無言になった唯に臣は呆れた。よく此処まで無事だったな、と。
「出来れば危機感なんて感じたくないんですけれど」
離せ、と言外に言い含めてみるが、それに気づいているはずなのに臣は飄々と聞き流した。臣にしてみれば朱鷺に付けられた痕に苛立ちはするものの、この美味しい状況を逃すはずもない。
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