「会長?お前ら付き合ってたのか」
「付き合ってるわけないでしょお」
何言ってんの、という目で保険医を見やる。
「は?じゃあセフレか??」
「殴りましょうか」
唯は思わず素でニッコリと黒く笑んだ。その黒さに当てられた保険医は冷や汗を掻く。
「いや、じゃあ何でだ?」
しどろもどろに言う保険医に痛いところを突かれて唯は眉を潜める。
「…それが分かったらどんなに苦労しないことか」
「あ?」
「何でもないですよお。手当て、ありがとうございましたぁ」
ひらりと保険医の尋問から抜け出して出て行った。唯は苦い顔をして、深く溜息をつく。顔を引き締めたあと、その場を去っていった。
唯はその後自分の寮部屋へと帰り、ベッドへと寝転がった。癒されに外に出たはずなのに疲れが溜まってしまった唯は、ゆっくりと瞼を下ろした。
(疲れました…)
ポツリと零した呟きは空気に溶けて消えた。暫くして部屋には寝息だけが聞こえてきた。
どうか眠っている時だけは安静に、静かに。そう願わずにはいられなかった。
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