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「せーんせ♪」
チャラ男装備な唯は保健室のドアを勢いよく開けた。
「あ?此処はラブホじゃねぇよ下半身男」
「…分かってますってぇ」
保険医の物言いに呆れながら、表面だけはヘラリとした笑みを貼り付けたまま言う。
「じゃあ何しに来たんだ」
「手当てしてもらいに来たんですー。此処は保健室でしょお?」
「手当て?お前が?」
「酷い言われようですねぇ」
「いや、お前そこそこ強いだろ。なんたって手当て?」
まあ気持ちは分かりますけどね、と唯は心中で呟く。一応学園内では力というか喧嘩は強い方だと名は通っている。だからこそ保険医は唯が保健室に来たことに驚いているのだ。
「ちょっと野獣に噛まれちゃいましてねぇ」
的確すぎる表現に唯は内心苦笑を漏らした。
「は?野獣?」
「そぉ、野獣。凶暴なんですよぉ」
テキパキと用意を整えながら保険医は訝しげに唯を見やる。
「とりあえず、どこを噛まれたんだ?」
「首」
それまで覆っていた手を唯はパっと離した。そこに現れた尋常じゃない血の量に保険医はギョッと目を瞠る。そして慌ててタオルでその部位を押さえつけた。
「おい!首なら首だと早く言え!!」
「えぇぇ」
「首は出血量が多くなる。貧血になるぞ」
というか此処までよく歩いてこれたな、と保険医は眉を寄せた。唯は知らんぷりで窓の外を見やる。
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