20
「やはり、猫を被っていたか」
「っ!」
サっと唯は青褪める。まさか、学園の二大権力者にバレるなんて。
「その様子だと、鳳凰寺も知っているのだろう」
「ッ」
「やはり、な」
このときばかりはこの男の勘の良さを恨んだ。
「言わないで、ください」
「言わねぇよ」
即座に返ってきた答えにホっと息をつくのもつかの間。
「惜しいだろう。学園がお前の良さを知るには」
チュ、と首筋から音が聞こえた。また付けられたのだと、唯は冷静に頭の中で思う。
「猫を被っていた、とおっしゃいましたよね」
「ああ、言ったな」
「知っていたのですか」
朱鷺の言い方だと、前々から知られていたように思える。唯は単刀直入に尋ねた。
「元々感付いてはいた。決定打が無かったから断言は出来なかったがな」
「そう、ですか」
「俺はお前をずっと見ていたからな、知っている」
「委員長…?」
「その反抗的な目が、好きだ」
近づいてくる朱鷺に反射的に目を瞑ると、その瞼に柔らかいものが落ちてきた。キスをされたのだと気づいたのは目を開けた時だった。
同時に、間近にある端整な顔立ちに違和感を覚える。目だ。目の色が違うのだ。
常に冷静に光っているその鋭い瞳が、愛しいと言っているような気がした。それはきっと唯の気のせいではない。
「…まだ、言わねぇよ」
いつしか強張っていた身体が、その一言で力が抜けた。しかし次の瞬間、戦慄する。
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