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「これは、誰の痕だ」


 朱鷺の言う意味が分からなくて、唯は寝起きの思考を巡らせる。


「もう一度言う。このキスマークは、誰に付けられた」


 きすまぁく?

 回らない思考が言葉の意味を必死に探す。

 きすまぁく…キス、マーク?

 潔く意図を理解し、ついでに昨日の出来事を思い出した唯は発火したように顔を朱に染め上げた。その様子を、朱鷺はやはり口をへの字に引き結び、目をますます細くして見る。


「誰に、付けられた」


 唯が慌てて取り繕うより先に、有無を言わせぬ口調で朱鷺は問う。朱鷺の苛立ちに当てられた唯は思わず口を滑らせていた。


「か、いちょうに」
「チッ」


 間近で舌打ちされる恐怖を皆は知っているだろうか。しかも相手は美形であることも重なってダメージはかなり大きい。


「何された」
「え、」
「他に何をされた?鳳凰寺に」


 掘り返してくる朱鷺に、唯は無言で返答する。男のプライドというよりは恥ずかしさが勝って言えないのだ。


「氷室」


 吐け、と命令口調で言う朱鷺に、唯はゴクリと喉を鳴らす。恐怖に負けた唯は渋々口を開く。

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