17
―――今日は休め。鳳凰寺 臣―――
「お言葉に甘えますか」
唯は開いたままだったドアを閉め、また部屋へと戻る。唯のとって久しぶりの休日である。仕事が溜まりすぎて土日も出勤していたのだ。世の中のサラリーマンパパも驚きである。
唯は制服をハンガーにかけ、ふぁぁ、と欠伸を漏らした。
「眠い、です」
やはり一日寝たくらいでは今までの疲れは癒せないらしく、そのままベッドへとダイブしようとして思いとどまった。唯はふと思いつき、ふむ、と頷く。
「…散歩に行きましょう」
癒しを求めに部屋を出ようと足を動かした。その判断がのちに後悔することも知らず。
「―――良い天気…」
唯は中庭へと出向いていた。草の上に転がり、ハニーブラウンの髪を風が揺らす。視界に映る緑の柔らかい色に癒されて、唯はおのずと目を閉じていく。
ふわりふわり、と漂う意識の中、誰かの気配を捕らえて嫌々ながら顔を上げる。
「い、いんちょ…」
風紀委員長、その人を呼ぼうと口を開ける。しかし寝起きの掠れた声は思うように出ず、唯は眉を潜めた。
「なぁ、氷室」
不機嫌な声に首を傾げながら見上げる。朱鷺は端整な顔立ちを歪め、どこか苛立ちの含んだ目で唯を射抜いた。
その状態のまま、するり、と唯の首筋を撫でた。不意を突かれた感触に思わず身体を揺らす。
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