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―――今日は休め。鳳凰寺 臣―――


「お言葉に甘えますか」


 唯は開いたままだったドアを閉め、また部屋へと戻る。唯のとって久しぶりの休日である。仕事が溜まりすぎて土日も出勤していたのだ。世の中のサラリーマンパパも驚きである。
 唯は制服をハンガーにかけ、ふぁぁ、と欠伸を漏らした。


「眠い、です」


 やはり一日寝たくらいでは今までの疲れは癒せないらしく、そのままベッドへとダイブしようとして思いとどまった。唯はふと思いつき、ふむ、と頷く。


「…散歩に行きましょう」


 癒しを求めに部屋を出ようと足を動かした。その判断がのちに後悔することも知らず。


「―――良い天気…」


 唯は中庭へと出向いていた。草の上に転がり、ハニーブラウンの髪を風が揺らす。視界に映る緑の柔らかい色に癒されて、唯はおのずと目を閉じていく。
 ふわりふわり、と漂う意識の中、誰かの気配を捕らえて嫌々ながら顔を上げる。


「い、いんちょ…」


 風紀委員長、その人を呼ぼうと口を開ける。しかし寝起きの掠れた声は思うように出ず、唯は眉を潜めた。


「なぁ、氷室」


 不機嫌な声に首を傾げながら見上げる。朱鷺は端整な顔立ちを歪め、どこか苛立ちの含んだ目で唯を射抜いた。
 その状態のまま、するり、と唯の首筋を撫でた。不意を突かれた感触に思わず身体を揺らす。

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