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「言い訳はあるのか」
「…最近、」
「最近?」
怖い笑顔で促されて、唯は渋々口を開いた。
「最近、仕事が忙しくてあまり寝てないでしょう?今日くらいは、寝てほしいって思って」
「お前、」
「…勝手な事をして、すみませんでした」
シュンと唯は表情を曇らせる。そんな唯に、臣は怒った表情から一変して呆れた表情になった。
「氷室、顔上げろ」
臣に顎を持たれて上を向かされる。
「お前を差し置いて俺が寝るのは有り得ないだろう」
「え、」
「俺も寝ていないがお前だって寝ていないだろ」
「な、知って」
「知ってる。俺が生徒会室に残るなと言ってるのに結局書類を持ち帰って寮でしているのも、そのせいであまり睡眠が取れていないことも」
知られていたことに唯は驚いて声も出ない。臣はすぅ、と目を細めて唯を見る。
「確かにお前は顔に出にくいかもしれんが見ていたら分かる。以前より痩せているようだし」
臣の言う通り、唯は転入生が来てから3キロほど痩せた。元々細い方だったのに痩せたせいで益々頼りなく見える。しかしそれほど目立ってこれ!といったほどではないのに、臣は気づいたという。
「そのお前を差し置いて、トップである俺が寝てどうする。後輩は先輩に頼っておけ」
呆れた口調に唯は呆然としながら臣を見上げる。
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