08
エロいのは外見だけでなく、可愛いチワワを入れ食いしていたのは周知の事実である。しかし、最近はパッタリと辞めたらしい。それがさらに唯の苛立ちを増幅させる。
「書類を持ってきましたぁ」
「あぁ。なぁ、氷室」
朱鷺に呼ばれ、唯は首を傾げる。呼ばれたことに対してではなく、朱鷺がいつもと様子が違うからだ。
「どうしましたぁ?」
「仕事は大丈夫なのか」
唯は驚いた顔をする。それはほぼ素に近い表情で、慌ててヘラリとした顔に戻した。
「他人を気にかけるなんて、珍しいですねぇ」
唯が言っているのは事実だ。朱鷺は基本的に自分至上主義で他人を気にかけるなんてことはしない。珍しいことこの上ない言葉に、唯だけではなく風紀委員室内にいる全員が目を丸くしている。
「鳳凰寺と氷室以外していないんだろう?」
「…まぁねぇ」
「この書類も、」
朱鷺は受け取った書類を指す。
「お前がやったんだろう」
朱鷺の言葉に唯は眉を寄せた。のに対して風紀委員は驚愕を顔に貼り付ける。
唯が持ってきた書類はかなりの量だ。確かに彼は成績は良いがあまり良い噂は聞かない。それに仕事をしないと囁かれている彼が、一人でこの量をこなすのは有り得ないと思われていた。
大方会長がやっているのだろうと踏んでいたのだ。それくらい書類の量は多く、2,3人分である書類の分厚さに風紀委員は驚いたのだ。まさか、と彼に注目する。
▼