06



 カタカタとキーボードを打ち、真面目な顔で画面と睨めっこをしていた唯が不意に手を止めた。


「…ふう」


 一つ息を零し、唯は背伸びをする。時計を見るともうすでに臣を無理やり仮眠室に押し込んでから3時間は経っていた。
 「一時間後に起こせ」という臣の命令を軽く無視している。しかし唯は気にする風もなく、さらに臣を起こそうと腰を上げることもない。もとから企んでいたことだった。
 最近すっかり仕事に明け暮れて毎日睡眠をしっかり取れていないことを知っている唯は、この機会にここぞとばかりに寝てもらおうと、意図的に臣を起こしていないのであった。
 起きた臣に怒られるのは目に見えてはいるが、それでもしっかり睡眠を取って欲しかったのだ。もちろん、なんだかんだ言いつつも唯にだって睡眠は取れていない。
 いつも臣と最後まで生徒会室に残ろうとするのだが、許してくれないのでこっそり書類を持ち帰って自分の寮でこなしているのだ。だから唯も人のことはいえないのだが、幸い顔に隈やらが出にくい体質なようで未だ誰にも気づかれていない。


「…大体は終わりましたね」


 ふむ、と最初より随分減った書類の山を見て頷いた。唯は先程終わらせた書類と、寮でこなしてきた書類をバレないように混ぜたそれらを持って立ち上がった。
 かつかつと、偽っている唯では有り得ない凛とした姿で生徒会室の出入り口へと向かう。一つ深呼吸して緩い表情を作ったあと、派手なドアを押し開けた。

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