08 四嗤



「ならどうすれば信じる?」
「…誠意を見せてもらえたら、そうですね。考えて差し上げてもいいでしょうか」
「誠意、ねぇ」


 jokerの言葉にふと考え込む。


「…?」


 不思議そうにするjokerには声を掛けず、無言で手を持ち上げる。


「なにを」
「なにって、キス?」
「………」


 手の甲へと口付けを落とせば、微かに眉を潜めた。仮面の綻びが見える。


「知ってるか?」
「…なにをです」
「キスの位置によって意味が変わる」
「Franz Grillparzer (フランツ・グリルパルツァー)、でしょうか」
「ああ、よく知ってるな」


 予想通りに博学なjokerにニヤリと笑む。


「Auf die Hande kust die Achtung(手なら尊敬)」


 俺は額に顔を近づけるが、決して触れない。この意図、お前になら分かるだろう?


「Freundschaft auf die offne Stirn(額なら友情)」
「Auf die Wange Wohlgefallen,(頬なら厚意)Sel'ge Liebe auf den Mund(唇なら愛情)」


 頬と唇にバードキスを施す。


「!」
「Aufs geschlosne Aug' die Sehnsucht(瞼なら憧憬)」
「…憧れなど、貴方にはないでしょうに」
「さぁな」


 反射的に閉じられた瞼に口付ける。

prev next

 



top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -