「知ってるか?」
「…なにをです」
「キスの位置によって意味が変わる」
「Franz Grillparzer (フランツ・グリルパルツァー)、でしょうか」
「ああ、よく知ってるな」
なら分かるよな?と王は言い、手の甲にキスを落とした。
「Auf die Hande kust die Achtung(手なら尊敬)」
次に王は額に唇を近づけた。しかしそこに触れることはない。
「Freundschaft auf die offne Stirn(額なら友情)」
そこに触れなかったのは、僕に対しての挑戦だろうか。王が持つ感情は友情ではないのだと、行動で示す。
「Auf die Wange Wohlgefallen, (頬なら厚意)Sel'ge Liebe auf den Mund(唇なら愛情)」
頬と唇にバードキスが施される。抵抗出来ない僕が嫌だ。どうしてだろうか。逃げることを許されないその目に射抜かれて動けないのだけど。
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