07 三笑



「―――jokerを捕まえて何を御所望ですか」


 ニコリと作り笑いの仮面を被って僕は聞く。王に学校から連れ出され、王がよく行くバーへと来ていた。カウンターに座らせられた僕は王の意図を探る。
 隣に座る王はゆったりと振り向き口角を上げた。無口無表情が基本である王が表情を出すことは珍しい。だけれど初めて出会った時から既に表情を知っている僕は何だろうか。


「お前の情報が欲しい」
「jokerについての情報は範囲外です」


 この問いは予想の範疇だ。即答すれば王は不機嫌そうに眉を寄せた。


「俺はjokerを欲している訳ではない」
「…意味を聞いてもよろしいでしょうか?」


 僕が言えば、王は目を細めた。長い足を組み換えるその仕草でさえ優雅に映る。


「jokerなど必要無い。俺が欲しいのは―――」


 グイ、と後頭部を掴まれ引き寄せられる。王は甘美な甘い声音を僕の耳へと吹き込んだ。


「水名静という人間、だ」


 僕は笑みを表面に浮かべたままだったけれど、心の中で息を吐いた。やはり、とは言いたくはなかった。しかし王は逃がしてはくれなさそうだ。

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