06



 一度だけ頼み事をしたことがあるんだよ。あまりにも残酷すぎる有様に、僕も目を瞑っていられなくて。
 その際に助けを求めたのが、王だったんだよね。その当時には既にトップだったから頼める人は王だけだったんだ。いつも通り電話したんだけどね、頼みは直接しか聞かないって言われちゃって。
 仕方が無く初めて夜の世界へと足を踏み入れたんだ。そうしたら王もまさか「joker」が目の前に現れるだなんて思っていなかったらしく。
 目を瞠っていたけど、アッサリ了承してくれたんだよね。そこまでは良いとする。でもその後が問題なんだ。


「―――ただし、条件がある」


 楽しそうな、それでいて獰猛な笑みで王は言い放った。


「俺とゲームをしろ」


 ゲームの内容はこうだった。


「王がjokerを探し、見つけ出したら道化は王のものになる」
 至極簡単だ。だけれど、だからこそ難解なゲーム。それも僕に利益はない。頼みを聞いてもらっている身だからこそ何も言えないのだ。不公平だと思わない?


「期間は3ヶ月でいい」
「短くないですか?」
「短いくらいが丁度良い」


 ニヤリ、と笑む「王」に僕はゾクリとした。恐怖でも怯えでもない。jokerは笑う。嗚呼、なんて楽しいのだろう、と。


-Ich durchnasse mich darin. es gibt es nicht mehr als dieses-
(これ以上ないほどの悦に浸る)

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