03



 涼介君は僕のこの表情が苦手なのです。他の人達も僕が微笑むと尻尾を巻いて散り散りに逃げ出すんですよ?酷くないですか?僕はまだ何もしていないというのに。


「…また何を企んでるのさ」
「企むだなんて人聞きの悪い」
「またってのは否定しないんだね」


 涼介君は頬を引き攣らせながらそう言いました。鋭いところを突いてきますねぇ。表情を崩さないまま僕が呟くと、涼介君は後退りしました。


「…愉快犯め」
「否定は出来ませんけど、本人を前にして言いますか?」


 苦々しい顔をする涼介君に思わず笑ってしまいます。彼のハッキリ言う性格は好ましいです。それが嫌という方もいるでしょうけど、僕にしてみれば付き合いやすいタイプですからね。


「ああ、そういえば委員長が佐々のことを呼んでたよ」
「黒羽さんがですか?分かりました、後ほど伺います」
「そうして。さて、仕事しなくちゃね」


 少々放置していましたもんね。騒ぎは収まるどころかヒートアップしているようですし。目を細めて無表情になった涼介君はまるで人形のようです。
 野次馬に向かって歩いていく華奢な背中をみとどめて、すっかり冷めてしまったポタージュを口に入れました。音を立てないようにスプーンを置き立ち上がります。
 ざわめきが徐々に収まっていくのをBGMに、食堂を後にしました。

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