上司に書類を渡すという鬼門を乗り越え、新たな書類を幾つか進めていたら時計の針が正午を伝えていた。キリのいいところで切り上げて、咲は昼食にすることにした。
椅子の上で手を組んで伸ばすと、ボキボキとあちらこちらから悲鳴があがった。整体に行くべきか、などと考えながら立ち上がろうとしたとき、ふと影が差した。
「太刀川?」
「課長、昼一緒でもいいですか?」
難しい顔をして見下げてくる朝貴を不思議に思いながら特に断る理由もない咲は快く了承した。
「太刀川、今日昼は?」
「あ、コンビニか何かで」
「じゃあ店に行こうか。嫌いな食べ物は?」
「ないです」
「よし。行くか」
ポンポンと会話を交えて外に出る準備をする。最初は戸惑っていた朝貴も咲にならって慌てて準備をする。朝貴が準備を終えたのを確認してオフィスを出た。
その際、二人の仲良い姿を邪推する一部の女性社員が頬をだらしなく緩めながら仲間とおしゃべりを開始するのであった。
「やっぱり課長が上でしょー」
「イケメン受けも美味しいわね」
「絶対年下攻め至上主義」
社内でも人気の美人社員3人がそんな会話を交わしていたことを知る者はいない。
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